iwao's diary

小林巌生のブログ

World Data Viz Challenge 2016レポート【前編】

次世代のICT人材育成を目的とした神戸市の事業「World Data Viz Challenge 2016」のワークショップとプロフェッショナルツアーを開催するため、6月14日〜18日までの日程でバルセロナに行ってきた。

神戸市のページ

kobe-barcelona.net

この事業はぼくらlaboratory urban DECODEが神戸市に企画提案させてもらい、事業委託を請けて実施することとなった。
日本側のコーディネートをぼくが担当し、バルセロナ側のコーディネートを吉村有司が担当した。

次世代ICT人材の重要性

神戸市が事業を実施する目的としては、繰り返しになるが、「次世代のICT人材育成」である。神戸市はこれまでもオープンデータやICTの活用を通じてオープンガバメントにも積極的に取り組んできたが、世界の先進的な都市と比較すれば神戸市のこうした取組もまだまだ始まったばかり。エビデンスベースドで意志決定することや、Civic Techの活動の中でデータを応用することなど、今後、こうした動きに参画してくれる新たな人材を求めている。

今回のワークショップ参加者への課題は都市の状態をデータビジュアライズすること。データビジュアライズ作品を制作するには、着想、実現するための分析技術、表現力などトータルなスキルセットが必要となる。これからのまちづくりにはこうした人材の重要性はさらに増していくと考えられる。

18組25名が参加

今回の参加者は一般から応募があった18組25名。募集を開始するまでは正直どの程度応募があるか不安もあったのだが、ふたを開けてみれば、定員を大きく上回る応募があり、結果、想定していた定員を若干増やし18組25名を参加者として決定することとなった。
メンバーは地元神戸大、神戸芸工大慶應大、佐賀大、熊本大、兵庫大などから多数の大学生に参加してもらうことができた他、NEC、ヤフージャパン等企業、Code for Kobe、Code for TOKYO、Code for YOKOHAMAなどCivic Techコミュニティからの参加もあった。

 

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バルセロナでのワークショップ、会場は世界遺産

神戸市とバルセロナ市は姉妹都市であり、また、バルセロナ市はスマートシティーの先進都市として広く知られている。今回の企画の目的にはバルセロナ市のICT戦略について直接学ぶということもある。

ワークショップは6月15日〜16日の二日間に渡って開催。会場はなんと、世界遺産であるサンパウ病院。この建築、ガウディと並びスペインを代表する建築家リュイス・ドメネク・イ・ムンタネーによる設計で、1997年にユネスコ世界遺産に登録されている。現在は病院としての役目は終えて、世界中のインスティテュートが多数オフィスを構えている。

今回会場を提供してくれたCasa Asiaもこのサンパウ病院の敷地内の一棟に入居している。
このような素晴らしい環境でワークショップが実施できたことについて、あらためて、Casa Asiaに感謝したい。

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一日目:バルセロナのデータビズ事例発表

一日目のプログラムと登壇者は以下のとおり。

Opening Talk

  • Miquel Mateu (Director of Asia-Pacific Program, City Council of Barcelona)
  • Taisuke MATSUZAKI (Creative City Promotion Department Planning and Coordination Bureau Kobe City Government)
  • AGAUR representative
  • Hiroyuki MAKIUCHI (General Consulate of Japan in Barcelona)

Key speech

  • Lluís Sanz (Corporate Information Director. City of Barcelona - IMI): Barcelona: Data Strategy for a Sustainable City

Cooperation between public administration, academic and company for OPENDATA policy-making model for Japan

  • Nobuaki NAGAI (Creative City Promotion Department Planning and Coordination Bureau Kobe City Government)
  • Katsuhiko TOMITA(Office of Strategic Research Management, Kobe University)
  • Yuki OHYAMA(FaithCreates Inc. CEO)

Data VIZ Group 1

  • Mar Santamaria & Pablo Martinez (300,000km/s)
  • Yahoo! Japan
  • Francesc Muñoz & Marina Cervera (Observatorio de la Urbanizacion, UAB)
  • David Laniado (Eurocat)
  • Federico López Fernández (ESRI)
  • Juan Antonio Bermejo Domínguez (Cabildo)

オープニングトークでは在バルセロナ日本総領事である、牧内さんによりSTEM教育の重要性が語られ、今回の事業の意義を改めて確認するような内容であったことは励みになった。
ちなみに、牧内さんはこの6月末で総領事を離任し、日本に戻られたとのこと。

在バルセロナ日本国総領事館

 

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 キースピーチでは、バルセロナ市情報局のルイスさんからバルセロナ市のICT戦略について紹介してもらった。印象的であったのは、オープンデータにしても、オープンガバメントにしても、今後都市に起こる変革をどのようにコントロールしていくかといった観点からこれらを位置付けて戦略を立てていることと、もうひとつ、あらゆる具体的課題に対するソリューションの中で当然のようにICTを使っていくことを前提としているということ。これぞ、スマートシティー先進都市バルセロナたる所以なのだろうと感じた。

 

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他、一日目のプレゼンテーションで個人的に気になったのは、オンラインでの対話の仕組みを紹介してくれた、Eurocatのプロジェクトだ。
日本でもオープンガバメントの推進が言われるようになって久しいが、これまでオンラインでの対話の場をどう作っていくかといった議論もたびたびされてきた。日本では似たチャレンジとしてアイディアボックスが過去数回実施されて来たが、定常的に本格運用されるようなオンラインでの対話の仕組みは存在しない。今回紹介されたアプリケーションは、まさに、市民参加とオープンガバメントのためのアプリケーションとして設計されていることが特徴となっている。

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参加者の一人、和田くんの記事を引用させていただく。

「decidim.barcelona」は、これまではオフラインで政治家だけの会議によって決まっていた市の計画といった議論に、市民が簡単に参加できるようにすることを目的としたプラットフォーム。
オフラインでは、議論の規模を大きくしようとすると単純に部屋の規模を大きくすると言った手段しかありませんでしたが、オンライン上にプラットフォームを作ることで容易に規模を大きくしました。
プラットフォーム上で会議を行い、市民はそれを見て自由に発言することが出来ます。

www.civicwave.jp

decidim.barcelona

GitHub - consul/consul: Consul - Open Government and E-Participation Web Software

 

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ちなみに、バルセロナではコーヒーブレイクを重要視しており、11時頃から1時間くらいしっかり休憩をとる。そして、昼休みは14時〜16時までというのが日常。なんとも羨ましい。
郷に入っては郷に従えということで、今回のワークショップでもコーヒーブレイクとランチタイムにはケータリングを手配して交流を深める機会を設けた。

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 ちなみに、下の写真はワークショップとは関係ないが、バルセロナに到着した日にさっそく訪れたサグラダファミリア。自然光が美しく聖堂内を照らし幻想的な雰囲気に包まれる。

Sagrada Familia

前編(バルセロナからのプレゼンテーション)

中編(日本からの参加者によるプレゼンテーションとシンポジウム)

後編(バルセロナICT×まちづくり最先端視察ツアー)