World Data Viz Challenge 2016レポート【中編】
二日目:日本からのデータビズ発表
二日目は日本からの参加者によるプレゼンテーションと、後半は現在バルセロナが注目しているコラボレーティブエコノミーをテーマとしたパネルディスカッションを実施した。
二日目のプログラムは以下のとおり
Introduction of JEUPISTE
- Aïda Díaz, AGAUR: opportunity for collaboration between Catalunya and Japan (Plan Japan)
- Katsuhiko TOMITA, Kobe University
Data VIZ Group 2
- KAWAI HIROAKI (Internet Initiative Japan Inc.)
- SHIMOYAMA SAYOKO (LinkData inc.) and NISSHIMURA MISA (MISA Design)
- TAKAHASHI TORU (ATR Creative inc.)
- NISHINO AKIHIKO (Keio University) and SATO RYO (Keio University)
- KATAHASHI TAKUMI (Kumamoto University)
- TANAKA KENICHIRO (University of Hyogo)
- HAYASHI ARISA (Kobe University)
Data VIZ Group 3
- KAGAWA TAKUHIRO (Kobe University) and WADA YOSHIHIRO (Kobe University)
- IMAMURA SHUNTA (Kobe University)
- EIGEN MASAHIRO (KOBE DESIGN UNIVERCITY)
- KAWANAGO ERI (Codesign Tokyo) and MASUMA TOMOAKI (Keio University)
- ISHIZAKI KOTARO (NEC Solution Innovators, Ltd.)
- WATANABE RURIKO (Kobe University) and FUJISAWA TAKUMA (Kobe University)
- SUGINOUCHI SHOTA (Kobe University)
- YAZAKI YUICHI (Code for Tokyo) and ENOMOTO MAMI (Code for Tokyo)
Beyond Smart City: from Smart City to Collaborative Commons Economy Presentation(15:30 - 16:40)
- Yuji YOSHIMURA: Introduction
- Salvador Rueda (Agència d'Ecologia Urbana): Big Data Analysis for Policymaking for the City
- Izua KANO (NTT Docomo inc.): Smart City in Case of Japan
- Mayo Fuster Morell (IN3/UOC): Economia col.laborativa procomun: Datos y politica de datos Pannel discussion(16:40 - 17:30)
- Yuji Yoshimura (moderator)
- City Council of Barcelona
- Taisuke Matsuzaki (City council of Kobe)
- Izua Kano (NTT DOCOMO inc.)
- Salvador Rueda (BCN Ecologia)
- Mayo Fuster (IN3/UOC)
話題提供とパネルディスカッション
昼食を挟んでシンポジウムを実施した。
スペインと日本から話題提供をしてもらったあとパネルディスカッションへと進んだ。モデレーターは吉村さん。
想像をはるかに超えていたバルセロナの都市計画「Super Blocks」
Super Blocksを紹介するSalvadorさん
シンポジウムのハイライトはなんと言っても、Salvadorさんによるスーパーブロックだろう。これについては、視察でオブザーブ参加してくれた、NTTデータ経営研究所の大林さんがすでに紹介してくれているので、そこから引用してみたい。
「スーパーブロック」の区内では、時速10km以内での移動(徒歩、自転車、小型車)を前提にデザインされ、最終的に時速50km以上のモビリティはスーパーブロック内を通り抜けできないように段階的に規制を設けていく予定である。そして、「スーパーブロック」施策の目的(アウトカム)は、「街に住んでいる人間の権利=自分で移動できる権利の保証」であり、目的達成に向けた中間指標(KPI:Key Performance Indicator)としては、「大気汚染度、騒音、人の移動時間、憩いの場(の有無)」といったもので、これらは「都市の品質」だといえるとのことであった。
バルセロナ市はSalvadorさんがディレクターを務める都市生態学庁によって提案されたこのスーパーブロックを採用することを既に決定しており、今後段階的に実装していくということ。実現にあたっては、交通標識の変更だけでも多くの部分を実現でき、それだけであればコストもさほどかからない。しかし、街にもたらされる変化は劇的なものになるというイメージが紹介された。
スパーブロックでは区内の車の通行に大幅な制限をかけていく。 Illustration: BCNecologia
市内のパブリックスペースが段階的に増えて行くイメージ Illustration: BCNecologia
このプランはとても大胆で驚くべきものだ。郊外の住民など市民の中にも生活で仕事で車を使う人々は多くいるはずだが、このプランは車に依存する人々に対してはとても不利に思える。しかし、バルセロナ市ではそれ以上に街中で市民が安全に健康に自由(移動の自由は自転車や公共交通機関で担保される計画)にくらせることが最優先されるのだ。今回のプレゼンテーションで示されたスーパーブロックがもたらすバルセロナの近未来像はどれも垂涎ものだ。バルセロナが着実にこの未来に向かって進むとすれば、今後数十年にわたって世界の人々を惹きつけて止まない都市でありつづけると思う。
関連する記事をいくつかシェアしておく。
Barcelona plans 'super blocks' to fight traffic and pollution - Tech Insider
バルセロナで注目される新しいコンセプト「コラボレーティブエコノミー」
コラボレーティブエコノミーについて説明するMayoさん
Mayoさんからはコラボレーティブエコノミーの概念が紹介された。
コラボレーティブエコノミーとは、彼女の説明では、ノーベル経済学賞を受賞したアメリカの経済学者、エリノア・オストロムの主張をベースにしており、オープンソースカルチャーがその代表的なもとであると言っていて、ようするに、コミュニティが協働して自分達が必要とする資源を産み出し、共有していこうという発想。バルセロナではクラウドファンディングとマッチングファンドの基盤であるGoteoやFab Labsが登場しており、コモンズプロダクションのシリコンバレーであると謳っている。
また、とくに印象的だったのは、そうしたアクティビティをどのように評価するかということにも言及しており、お金以外の指標が必要となるという話だ。これは、日本でも近年度々耳にするようになった、SROIと同じような話だろう(SROIは代理指標を用いて金銭価値に換算するんだけど)。
Goteoにしても、FabLabにしても、市民が主体的に活動することをサポートするためのプラットフォームだといえる。バルセロナ市はこのようなプラットフォームに積極的に投資を行っており、こうしたことからも、バルセロナでは行政と市民の役割がどのように捉えられているかを垣間見ることができる。同じ様な動きは近年の日本でもあり、どのように発展させていくかなど活発に議論されている。
以下のサイト「Commons Collaborative Economies」ではMayoさんも参加するコミュニティの活動紹介があり、多くの事例を知ることができる。
パネルディスカッションでの議論
ここでも印象的だったのはCitizen Centricが正義であるという考えが一貫されているということ。また、行政と市民とが対立する立場にあるのではなく、積極的にコラボレーションしていこという姿勢。
方々でも引用されているが、バルセロナ市情報局のオープンデータ推進に対する基本的な姿勢を紹介しておく。
オープンデータは皆の持ち物だった。(市役所のデータは公務の中で得られているのだから)データを皆に返していくという考え方。経済的価値を上げていくだけではなく、透明性も重要。また、オープンなフォーマットを採用するなど使いやすいデータにしていくことも必要。
パネルディスカッションのモデレーターは吉村さん(写真右)
講評は神戸市の松崎課長
最後は集合写真で終了
少し話題はそれるが、今回、個人的には約2年ぶりか?Goteoの生みの親エンリックに再開できたことが嬉しかった。
Goteoというのは、バルセロナで運用されているクラウドファンディングのプロジェクトで、返礼品の中に支援者のみならず、公共へのリターンを設定することが求められていたり、寄付だけでなく、プロジェクト起案者が求める手伝いをすることでプロジェクトを支援することができるなど、随所にオープンガバメント的な指向性が感じられるシステムとなっている。
横浜で運用されているクラウドファンディングのプロジェクトであるLocal Goodも実は、Goteoをベースにローカライズしている。Local Goodのプロジェクトにはぼくもオープンソースの選定からシステムのローカライズなど協力している。ちなみに、バルセロナでやられているようなマッチングファンドの仕組みは横浜にはない。
過去にLocal Goodのプロジェクトでエンリックを横浜に招いたことがあり、今回はそれ以来の再会ということになる。