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iwao's diary

小林巌生のブログ

World Data Viz Challenge 2016レポート【後編】

3日目:バルセロナの先進的な取組を学ぶ視察ツアー

3日目はバルセロナ市のいくつかの公的機関を視察した。

まず、バルセロナ市情報局を訪ねた。ここでは、バルセロナ市のICTプラットフォームの概念City OSと、その中に位置付けられ、センサーデータを統合するためのプラットフォームであるSentiloを紹介してもらった。DSCF7528

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官公庁とは思えない情報局の質の高い空間

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壁一面にプリントされたバルセロナの航空写真を見ながらオーバービューを解説

バルセロナ市のセンサー基盤「Sentilo」

Sentiloはセンサーデータを統合するためのプラットフォームで、データベース、API、センサーマネージメントのためのソフトウェア、ダッシュボード(GUI)などで構成されている。
対応するセンサーは複数あり、行政の目的別にセンサーが導入されている。

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一部ではよく知られるようになったCity OSのコンセプト。Sentiloは左下に位置付けられている illustration: Ajustment de Barcelona

SentiloにはデータにアクセスするためのREST APIが実装されており、簡単にデータを取得することができる。API仕様ではセンサーの追加もできるようになっているが、バルセロナ市で実際にどのように運用されているかは確認できていない。
センサーとサーバー、または、その先のアプリケーションの間でリアルタイムにデータをやりとりするためにPub/Subが採用されている。

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Sentiloのアーキテクチャ illustration: Sentilo

職員が利用するダッシュボードには目的別に用意されたデータビジュアライズが表示される。(データビジュアライズにはKibanaが使われていると言っていた。)
たとえば、時間帯や場所など市内の騒音の状況が一目でわかるようになっている。(スタジアムの近くの騒音センサーを見ていればFCバルサのゴールの瞬間がわかるとか)
センサーの不調などもすぐにわかるので、メンテナンスも効率的に行える。
各センサーから取得したデータをサーバーに送る通信には街のフリーWiFiを活用しており、通信費も抑えられている。(そういえば、先日オランダ全土でLoRaが利用できるようになったというニュースがあった)

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ダッシュボードのイメージ

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ダッシュボードのイメージ image: Sentilo

センサーの設置については担当部局と費用対効果など事前に十分な調査を行った上で計画を作っており、センサーの設置コストについては、EUの助成金(具体的にどの資金かは不明)が充てているということ。

ここで重要になるのは、バルセロナ市がなぜセンサーネットワークを推進しているかという点で、市民生活の質の向上、行政の効率化という目的が明確である点だ。空気の質、騒音、などはいずれも、市民の生活の質の向上を目標としている。ゴミのコンテナにセンサーを設置しているのは行政の効率化だ。

そして、Sentiloについてもう一つ重要な点がオープンソースであるという点だ。
Sentiloはバルセロナ市が開発したが、オープンソースとしてGitHubソースコードが公開されている。バルセロナ市はSentiloは自分たちで使うのみならず、世界の都市にむけた普及活動も展開している。すでに、カタルーニャ州の多くの市、ドバイなどに導入済みで、さらに、モンテビデオブリュッセルも関心を示しているとのこと。また、行政機関やセンサーサプライヤー、インテグレーターなどがコミュニティを形成している。神戸市にもぜひ導入してもらいたいと売り込みしていた。オープンソースを推進する理由としては、システムはより多く使われるようになることで、改善されたり、関する知識が共有が進むと期待していると強調していた。

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リンク:

http://www.sentilo.io/wordpress/

バルセロナ都市生態学

次にバルセロナ都市生態学庁を訪問した。バルセロナ都市生態学庁は都市を科学的に分析して評価や政策立案を行う専門部局で、ワークショップ二日目でスーパーブロックを紹介しれてくたSalvadorさんがディレクターを務めている。

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オフィスの窓からは地中海を望むことができる最高のロケーション、、DSCF7545

今回のツアーでは彼らの分析業務を実際のデスクトップを見ながら担当職員自ら説明してくれた。

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全員でデスクトップ画面をのぞきこみながらスタッフが解説

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都市の多様性、ヒートアイランド、空気の流れ、エアーポリューション、トラフィックシミュレーションなどについて、ソフトウェアやアルゴリズムを用いて分析し、都市の現状を把握したり、施策による変化をシミュレートしている。

ここで、分析結果をどのように評価すれば良いかという問題を思いつくと思うが、都市生態学庁では市民の生活の質の向上を目的とした根本的な独自の指標を作成している。

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4つのテーマ、7つのスコープ、41の指標を定め都市を評価している Photo: Sayoko Shimoyama

ちなみに、オフィスの目の前はすぐビーチ。。

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バルセロナ市設Fab Lab

バルセロナは早くからFab Labに取組み、その活動はよく知られているが、バルセロナ市では市設のFab Labを3箇所展開している。それぞれ、社会的弱者のサポートや、サスティナビリティやエナジーなど、扱うテーマを変えて、それに応じた機器をいれているとのこと。今後さらに拠点を増やしていく計画。
運営は日本で言うところの指定管理制度のような制度(正確なところは要調査)を使っているよう。

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今回視察したところは社会的弱者の生活の質の向上をテーマとした施設で、施設や設備の利用は全て無料。子供による利用も多いとか。4歳のグループが作品を作ったとか、センサーやカメラを内蔵した鳥の巣箱を12歳の子供が作ったとか、興味深い事例が紹介された。

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地域の教育機関と連携しており、学校の先生にも学びの機会となっている。ファブラボで体験学習を実施したり、学習方法と必要な知識や技術を習得した後、学校に戻ってそれを実践するなど、効果的に機能している。(しかし、プログラミングにしても、デジタルファブリケーションにしても、バルセロナでは先生より子供の方が詳しい場合も多いとか)

これはバルセロナに限らず、世界中のFab Labで共有されている思想だが、利用者にはなにかしらのコントリビューションがもとめられる。なにかを作る際の工程を記録して公開することだったり、自分で使用するために作った3Dモデルのデータだったりとか、知識や技術の交換と蓄積を無料で行うことが推奨されている。

子供たちはデジタルファブリケーションを体験することにより、より創造性を発揮できるようになる。また。地域や社会の課題に即した利用方法を考えるように促していることや、先に紹介したように、オープンコミュニティにコントリビュートすることが求められるので、そうした中で社会的な思考が育つ。
これも、バルセロナが政策として掲げる「コラボレーティブエコノミー」の一貫として、より説得力を持って感じられた。

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まとめ

昨今、日本の公的機関でもオープンデータやビッグデータに関する取組に積極的だ。しかし、日本の場合は往々にして、技術の導入自体が目的化してしまい、本質が見失われる傾向にあるのではないだろうか。一方、バルセロナ市では「市民の暮らしの質の向上」のような本質的な目標の達成のために技術を正しく理解しうまく活用していると感じた。また、都市生態学庁で見た「評価フレームワーク」があることで、政策立案に際しての合意形成もはかりやすく、効率的に仕事を進められているのではないか。

そして、それを支えるのは行政の科学技術に対する理解と人材もさることながら、バルセロナの歴史的背景のもと醸成されてきたCitizen-Centricという考え方が広く共有されていることが大きいのではないか。ゆえに、スマートシティーにしても、コラボレーティブエコノミーにしても、一本筋の通った長期的な政策を着実に進めることができているのではないだろうか。

帰国後、某省で打ち合わせしているときに聞いたのだが、省内での予算要求に対してエビデンスを求めていく方向にあると言っていた。
ここで言うエビデンスというのは、その事業を実施する理由、また、実施することで期待される効果をデータに基づき合理性を持たせた説明ができるようにせよということ。
神戸市でも職員を対象としたデータサイエンスの研修プログラムが実施予定とのこと。

今後、日本もバルセロナで目の当たりにしたような状況に少しでも近づくことを期待したい。

 

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Sagrada Familia

 

最後にお知らせ

「World Data Viz Challenge 2016」の2nd ラウンドを10月に神戸で開催します。参加者を追加で募集する予定ですので、ぜひ、ご注目ください。

また、すでに各方面からも問い合わせをもらっているのですが、バルセロナに視察に行きたいという方が多数いらっしゃるようであれば、改めてツアー企画をしようと考えています。興味のある方はご連絡ください。

 

前編(バルセロナからのプレゼンテーション)

中編(日本からの参加者によるプレゼンテーションとシンポジウム)

後編(バルセロナICT×まちづくり最先端視察ツアー)

World Data Viz Challenge 2016レポート【中編】

二日目:日本からのデータビズ発表

二日目は日本からの参加者によるプレゼンテーションと、後半は現在バルセロナが注目しているコラボレーティブエコノミーをテーマとしたパネルディスカッションを実施した。

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二日目のプログラムは以下のとおり

Introduction of JEUPISTE

  • Aïda Díaz, AGAUR: opportunity for collaboration between Catalunya and Japan (Plan Japan)
  • Katsuhiko TOMITA, Kobe University

Data VIZ Group 2

  • KAWAI HIROAKI (Internet Initiative Japan Inc.)
  • SHIMOYAMA SAYOKO (LinkData inc.) and NISSHIMURA MISA (MISA Design)
  • TAKAHASHI TORU (ATR Creative inc.)
  • NISHINO AKIHIKO (Keio University) and SATO RYO (Keio University)
  • KATAHASHI TAKUMI (Kumamoto University)
  • TANAKA KENICHIRO (University of Hyogo)
  • HAYASHI ARISA (Kobe University)

Data VIZ Group 3

  • KAGAWA TAKUHIRO (Kobe University) and WADA YOSHIHIRO (Kobe University)
  • IMAMURA SHUNTA (Kobe University)
  • EIGEN MASAHIRO (KOBE DESIGN UNIVERCITY)
  • KAWANAGO ERI (Codesign Tokyo) and MASUMA TOMOAKI (Keio University)
  • ISHIZAKI KOTARO (NEC Solution Innovators, Ltd.)
  • WATANABE RURIKO (Kobe University) and FUJISAWA TAKUMA (Kobe University)
  • SUGINOUCHI SHOTA (Kobe University)
  • YAZAKI YUICHI (Code for Tokyo) and ENOMOTO MAMI (Code for Tokyo)

Beyond Smart City: from Smart City to Collaborative Commons Economy Presentation(15:30 - 16:40)

  • Yuji YOSHIMURA: Introduction
  • Salvador Rueda (Agència d'Ecologia Urbana): Big Data Analysis for Policymaking for the City
  • Izua KANO (NTT Docomo inc.): Smart City in Case of Japan
  • Mayo Fuster Morell (IN3/UOC): Economia col.laborativa procomun: Datos y politica de datos Pannel discussion(16:40 - 17:30)
  • Yuji Yoshimura (moderator)
  • City Council of Barcelona
  • Taisuke Matsuzaki (City council of Kobe)
  • Izua Kano (NTT DOCOMO inc.)
  • Salvador Rueda (BCN Ecologia)
  • Mayo Fuster (IN3/UOC)

話題提供とパネルディスカッション

昼食を挟んでシンポジウムを実施した。

スペインと日本から話題提供をしてもらったあとパネルディスカッションへと進んだ。モデレーターは吉村さん。

想像をはるかに超えていたバルセロナの都市計画「Super Blocks」

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Super Blocksを紹介するSalvadorさん

シンポジウムのハイライトはなんと言っても、Salvadorさんによるスーパーブロックだろう。これについては、視察でオブザーブ参加してくれた、NTTデータ経営研究所の大林さんがすでに紹介してくれているので、そこから引用してみたい。

 「スーパーブロック」の区内では、時速10km以内での移動(徒歩、自転車、小型車)を前提にデザインされ、最終的に時速50km以上のモビリティはスーパーブロック内を通り抜けできないように段階的に規制を設けていく予定である。そして、「スーパーブロック」施策の目的(アウトカム)は、「街に住んでいる人間の権利=自分で移動できる権利の保証」であり、目的達成に向けた中間指標(KPI:Key Performance Indicator)としては、「大気汚染度、騒音、人の移動時間、憩いの場(の有無)」といったもので、これらは「都市の品質」だといえるとのことであった。

www.keieiken.co.jp

バルセロナ市はSalvadorさんがディレクターを務める都市生態学庁によって提案されたこのスーパーブロックを採用することを既に決定しており、今後段階的に実装していくということ。実現にあたっては、交通標識の変更だけでも多くの部分を実現でき、それだけであればコストもさほどかからない。しかし、街にもたらされる変化は劇的なものになるというイメージが紹介された。

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スパーブロックでは区内の車の通行に大幅な制限をかけていく。 Illustration: BCNecologia

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市内のパブリックスペースが段階的に増えて行くイメージ Illustration: BCNecologia

このプランはとても大胆で驚くべきものだ。郊外の住民など市民の中にも生活で仕事で車を使う人々は多くいるはずだが、このプランは車に依存する人々に対してはとても不利に思える。しかし、バルセロナ市ではそれ以上に街中で市民が安全に健康に自由(移動の自由は自転車や公共交通機関で担保される計画)にくらせることが最優先されるのだ。今回のプレゼンテーションで示されたスーパーブロックがもたらすバルセロナの近未来像はどれも垂涎ものだ。バルセロナが着実にこの未来に向かって進むとすれば、今後数十年にわたって世界の人々を惹きつけて止まない都市でありつづけると思う。

関連する記事をいくつかシェアしておく。

Barcelona plans 'super blocks' to fight traffic and pollution - Tech Insider

Superblocks to the rescue: Barcelona’s plan to give streets back to residents | Cities | The Guardian

バルセロナで注目される新しいコンセプト「コラボレーティブエコノミー」

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コラボレーティブエコノミーについて説明するMayoさん

Mayoさんからはコラボレーティブエコノミーの概念が紹介された。
コラボレーティブエコノミーとは、彼女の説明では、ノーベル経済学賞を受賞したアメリカの経済学者、エリノア・オストロムの主張をベースにしており、オープンソースカルチャーがその代表的なもとであると言っていて、ようするに、コミュニティが協働して自分達が必要とする資源を産み出し、共有していこうという発想。バルセロナではクラウドファンディングとマッチングファンドの基盤であるGoteoやFab Labsが登場しており、コモンズプロダクションのシリコンバレーであると謳っている。
また、とくに印象的だったのは、そうしたアクティビティをどのように評価するかということにも言及しており、お金以外の指標が必要となるという話だ。これは、日本でも近年度々耳にするようになった、SROIと同じような話だろう(SROIは代理指標を用いて金銭価値に換算するんだけど)。

Goteoにしても、FabLabにしても、市民が主体的に活動することをサポートするためのプラットフォームだといえる。バルセロナ市はこのようなプラットフォームに積極的に投資を行っており、こうしたことからも、バルセロナでは行政と市民の役割がどのように捉えられているかを垣間見ることができる。同じ様な動きは近年の日本でもあり、どのように発展させていくかなど活発に議論されている。

以下のサイト「Commons Collaborative Economies」ではMayoさんも参加するコミュニティの活動紹介があり、多くの事例を知ることができる。

Commons Collaborative Economies | Barcelona – Policies, Technologies and City for the People. Policy & FLOSS for the Commons.

パネルディスカッションでの議論

ここでも印象的だったのはCitizen Centricが正義であるという考えが一貫されているということ。また、行政と市民とが対立する立場にあるのではなく、積極的にコラボレーションしていこという姿勢。

方々でも引用されているが、バルセロナ市情報局のオープンデータ推進に対する基本的な姿勢を紹介しておく。

オープンデータは皆の持ち物だった。(市役所のデータは公務の中で得られているのだから)データを皆に返していくという考え方。経済的価値を上げていくだけではなく、透明性も重要。また、オープンなフォーマットを採用するなど使いやすいデータにしていくことも必要。

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パネルディスカッションのモデレーターは吉村さん(写真右)DSCF7513

講評は神戸市の松崎課長

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最後は集合写真で終了

少し話題はそれるが、今回、個人的には約2年ぶりか?Goteoの生みの親エンリックに再開できたことが嬉しかった。

Goteoというのは、バルセロナで運用されているクラウドファンディングのプロジェクトで、返礼品の中に支援者のみならず、公共へのリターンを設定することが求められていたり、寄付だけでなく、プロジェクト起案者が求める手伝いをすることでプロジェクトを支援することができるなど、随所にオープンガバメント的な指向性が感じられるシステムとなっている。
横浜で運用されているクラウドファンディングのプロジェクトであるLocal Goodも実は、Goteoをベースにローカライズしている。Local Goodのプロジェクトにはぼくもオープンソースの選定からシステムのローカライズなど協力している。ちなみに、バルセロナでやられているようなマッチングファンドの仕組みは横浜にはない。
過去にLocal Goodのプロジェクトでエンリックを横浜に招いたことがあり、今回はそれ以来の再会ということになる。

前編(バルセロナからのプレゼンテーション)

中編(日本からの参加者によるプレゼンテーションとシンポジウム)

後編(バルセロナICT×まちづくり最先端視察ツアー)

World Data Viz Challenge 2016レポート【前編】

次世代のICT人材育成を目的とした神戸市の事業「World Data Viz Challenge 2016」のワークショップとプロフェッショナルツアーを開催するため、6月14日〜18日までの日程でバルセロナに行ってきた。

神戸市のページ

kobe-barcelona.net

この事業はぼくらlaboratory urban DECODEが神戸市に企画提案させてもらい、事業委託を請けて実施することとなった。
日本側のコーディネートをぼくが担当し、バルセロナ側のコーディネートを吉村有司が担当した。

次世代ICT人材の重要性

神戸市が事業を実施する目的としては、繰り返しになるが、「次世代のICT人材育成」である。神戸市はこれまでもオープンデータやICTの活用を通じてオープンガバメントにも積極的に取り組んできたが、世界の先進的な都市と比較すれば神戸市のこうした取組もまだまだ始まったばかり。エビデンスベースドで意志決定することや、Civic Techの活動の中でデータを応用することなど、今後、こうした動きに参画してくれる新たな人材を求めている。

今回のワークショップ参加者への課題は都市の状態をデータビジュアライズすること。データビジュアライズ作品を制作するには、着想、実現するための分析技術、表現力などトータルなスキルセットが必要となる。これからのまちづくりにはこうした人材の重要性はさらに増していくと考えられる。

18組25名が参加

今回の参加者は一般から応募があった18組25名。募集を開始するまでは正直どの程度応募があるか不安もあったのだが、ふたを開けてみれば、定員を大きく上回る応募があり、結果、想定していた定員を若干増やし18組25名を参加者として決定することとなった。
メンバーは地元神戸大、神戸芸工大慶應大、佐賀大、熊本大、兵庫大などから多数の大学生に参加してもらうことができた他、NEC、ヤフージャパン等企業、Code for Kobe、Code for TOKYO、Code for YOKOHAMAなどCivic Techコミュニティからの参加もあった。

 

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バルセロナでのワークショップ、会場は世界遺産

神戸市とバルセロナ市は姉妹都市であり、また、バルセロナ市はスマートシティーの先進都市として広く知られている。今回の企画の目的にはバルセロナ市のICT戦略について直接学ぶということもある。

ワークショップは6月15日〜16日の二日間に渡って開催。会場はなんと、世界遺産であるサンパウ病院。この建築、ガウディと並びスペインを代表する建築家リュイス・ドメネク・イ・ムンタネーによる設計で、1997年にユネスコ世界遺産に登録されている。現在は病院としての役目は終えて、世界中のインスティテュートが多数オフィスを構えている。

今回会場を提供してくれたCasa Asiaもこのサンパウ病院の敷地内の一棟に入居している。
このような素晴らしい環境でワークショップが実施できたことについて、あらためて、Casa Asiaに感謝したい。

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一日目:バルセロナのデータビズ事例発表

一日目のプログラムと登壇者は以下のとおり。

Opening Talk

  • Miquel Mateu (Director of Asia-Pacific Program, City Council of Barcelona)
  • Taisuke MATSUZAKI (Creative City Promotion Department Planning and Coordination Bureau Kobe City Government)
  • AGAUR representative
  • Hiroyuki MAKIUCHI (General Consulate of Japan in Barcelona)

Key speech

  • Lluís Sanz (Corporate Information Director. City of Barcelona - IMI): Barcelona: Data Strategy for a Sustainable City

Cooperation between public administration, academic and company for OPENDATA policy-making model for Japan

  • Nobuaki NAGAI (Creative City Promotion Department Planning and Coordination Bureau Kobe City Government)
  • Katsuhiko TOMITA(Office of Strategic Research Management, Kobe University)
  • Yuki OHYAMA(FaithCreates Inc. CEO)

Data VIZ Group 1

  • Mar Santamaria & Pablo Martinez (300,000km/s)
  • Yahoo! Japan
  • Francesc Muñoz & Marina Cervera (Observatorio de la Urbanizacion, UAB)
  • David Laniado (Eurocat)
  • Federico López Fernández (ESRI)
  • Juan Antonio Bermejo Domínguez (Cabildo)

オープニングトークでは在バルセロナ日本総領事である、牧内さんによりSTEM教育の重要性が語られ、今回の事業の意義を改めて確認するような内容であったことは励みになった。
ちなみに、牧内さんはこの6月末で総領事を離任し、日本に戻られたとのこと。

在バルセロナ日本国総領事館

 

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 キースピーチでは、バルセロナ市情報局のルイスさんからバルセロナ市のICT戦略について紹介してもらった。印象的であったのは、オープンデータにしても、オープンガバメントにしても、今後都市に起こる変革をどのようにコントロールしていくかといった観点からこれらを位置付けて戦略を立てていることと、もうひとつ、あらゆる具体的課題に対するソリューションの中で当然のようにICTを使っていくことを前提としているということ。これぞ、スマートシティー先進都市バルセロナたる所以なのだろうと感じた。

 

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他、一日目のプレゼンテーションで個人的に気になったのは、オンラインでの対話の仕組みを紹介してくれた、Eurocatのプロジェクトだ。
日本でもオープンガバメントの推進が言われるようになって久しいが、これまでオンラインでの対話の場をどう作っていくかといった議論もたびたびされてきた。日本では似たチャレンジとしてアイディアボックスが過去数回実施されて来たが、定常的に本格運用されるようなオンラインでの対話の仕組みは存在しない。今回紹介されたアプリケーションは、まさに、市民参加とオープンガバメントのためのアプリケーションとして設計されていることが特徴となっている。

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参加者の一人、和田くんの記事を引用させていただく。

「decidim.barcelona」は、これまではオフラインで政治家だけの会議によって決まっていた市の計画といった議論に、市民が簡単に参加できるようにすることを目的としたプラットフォーム。
オフラインでは、議論の規模を大きくしようとすると単純に部屋の規模を大きくすると言った手段しかありませんでしたが、オンライン上にプラットフォームを作ることで容易に規模を大きくしました。
プラットフォーム上で会議を行い、市民はそれを見て自由に発言することが出来ます。

www.civicwave.jp

decidim.barcelona

GitHub - consul/consul: Consul - Open Government and E-Participation Web Software

 

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ちなみに、バルセロナではコーヒーブレイクを重要視しており、11時頃から1時間くらいしっかり休憩をとる。そして、昼休みは14時〜16時までというのが日常。なんとも羨ましい。
郷に入っては郷に従えということで、今回のワークショップでもコーヒーブレイクとランチタイムにはケータリングを手配して交流を深める機会を設けた。

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 ちなみに、下の写真はワークショップとは関係ないが、バルセロナに到着した日にさっそく訪れたサグラダファミリア。自然光が美しく聖堂内を照らし幻想的な雰囲気に包まれる。

Sagrada Familia

前編(バルセロナからのプレゼンテーション)

中編(日本からの参加者によるプレゼンテーションとシンポジウム)

後編(バルセロナICT×まちづくり最先端視察ツアー)

センサブルシティは都市における企業誘致の切り札となるか

4月になったので、昨年度のことになるが、横浜市経済局の「オープンデータ活用ビジネス化支援事業」という事業NPO法人横浜コミュニティデザインラボ、一般社団法人リンクデータとともに実施した。直接事業には関係ないかもしれないが、まちづくり×ICTという分野で自分がどのように今後振る舞いたいのか、改めて考える良い機会になった。
報告書用に少し考えを整理したので、たまにはブログにも記しておこうと思う。(報告書に記した内容をもとに、ブログ用に書き直しています。)

オープンデータビジネスの3分類

事業では、オープンデータをビジネスへ応用するという視点で、オープンデータが活用しやすい環境について検討した。
 
事業で実施した「第2回ビジネス活用のためのオープンデータセミナー:オープンデータを使ったビジネスモデル」でも講師として登壇いただいた、東氏によれば、オープンデータ活用ビジネスは次の3つの分野に分けられるという。
 
1.付加価値型
2.プラットフォーム型
3.新価値創造型
 
(各分野の定義とその事例については、東氏の講演資料に詳しく紹介されているので参考にされたい: http://www.slideshare.net/yokohamalab/20151020-3
 
付加価値型では、企業は自社の既存のサービスや製品に対して、オープンデータを活用することで付加価値を付ける。多くの場合、利用者のコンテキストに応じて独自の情報とオープンデータ由来の情報を組み合わせて情報提供するような機能が実装されている。
 
プラットフォーム型ではあらゆるデータにワンストップでアクセスできる環境を提供する面サービスが主流となっている。事業スコープにあう関連データを網羅的にデータベース化して、使いやすいインタフェースを実装してサービスする。
 
新価値創造型ではオープンデータをはじめ入手可能なデータを複合的にデータマイニングや未来予測などの価値を提供する。 

使いやすいオープンデータとは?3つの要素

ここからは、ぼくの考察だが、これらのサービスにおいて、いずれの場合もオープンデータにはアクセシビリティ、網羅性、即時性という要素が求められる。
 
アクセシビリティは、データへのアクセスが容易か、データを自社サービスに取り組むための加工コストは低いか、などの観点が含まれる。データモデルの標準化や語彙の標準化などを進めることで、データの相互互換性が高まり、サービス実装側の負担は軽減される。さらに、APIまで整備されれば、企業は独自のデータベースを持たなくとも、サービスを設計することが可能なケースもあり、システム構築にかける投資を抑えることができる。ここで言うAPIは行政が提供する場合、上記オープンデータビジネス3分類のうち、プラットフォーム型サービスによって提供される場合もあるだろう。
 
いずれにしても、ここで見えてくる構造はデータを資源として捉え、化石燃料のメタファーで説明することができる。化石燃料はそのままでは消費者の手には届かず、精製、加工、製品、流通といった過程を経て私たちの手に届くことになる。オープンデータについても同様で、生データ、データクレンジングや構造化、ウェブやAPIなどにのせていく、アプリやサービスでの活用、といった段階に分けて考えることができ、いずれの段階でもビジネスモデルは考えることはできる。
 
網来性はたとえば、A区では存在するオープンデータが、B区では存在しないとなれば、そのデータの利用を前提とするサービス自体の提供可能エリアはA区のみとなってしまう。こうした地理空間的な網羅性と、さらに、テーマ的な網羅性も考えられる。子育てに関するオープンデータを活用してサービスを構築しようとした場合、保育所のデータに加えて、医療機関のデータや公園のデータも組み合わせた方が、より、利用者のニーズに応えたサービス設計が可能となる。こうした観点からテーマ的な網羅性というのも重要となる。しかし、行政の場合は縦割り構造があるので、組織を横断して横串を刺して行く必要があるテーマで網羅性を担保するのは難しいケースもあるかもしれない。ただ、行政によるオープンデータが網羅性を欠いていたとしても、足りないところは企業自らがデータを収集し、補完することで、その分競合他社に対して競争力が持てるということも考えられる。
 
即時性は今後企業が提供するサービス設計においてより重要度が増していくと考えられる。近年、ソーシャルメディアの発達やスマートフォンの普及もあり、消費者の興味関心や消費のサイクルが短くなる傾向にある。企業では突発的なニーズの発火に対してもリアクションできるようなサービス設計が求めらている。
こうした状況の下、オープンデータに対しても即時性が求められる場面は増えてくると考えられる。とくに、刻々と変化するフィジカルな都市空間の状態を数値化し企業へ提供することで、たとえば、仕入れや生産の計画、モビリティの運行計画、催事やイベントの実施計画、各場面での消費者行動へのアフォーダンスの設計などにも大きな影響があると考えられる。ここで想定するような社会は民間だけでは実現するのは難しく、行政による「オープンデータビジネス活用のための基盤」の構築支援が必須となる。

「オープンデータビジネス活用のための基盤」構築の必要性 

行政がオープンデータを推進する目的の一つは経済活性化であるが、オープンデータを本格的にビジネスへ応用するためには具体的な課題も見えてきている。それら課題は大きく別けて次の二点に集約される。環境の未熟、企業の未熟だ。環境についてはすでに述べたとおり、アクセシビリティ、網羅性、即時性という観点からできることを探ることになる。とはいえ、いきなり全方位的に取り組むことは難しいと思うので、まずは、分野を限定する形でもかまわないので、企業との提携など戦略的にモデルケースを構築することが効果的ではないだろうか。
 
静岡市トヨタIT開発センターと提携し、道路の通行止めデータ等のAPI整備を行った。トヨタIT開発センターはカーナビゲーションシステムからAPIを使うことで、従来のVICSによるナビゲーションよりも即時性や精度の高いサービスの試作に成功している。トヨタIT開発センターの立場からすれば、より安全で快適な車社会の実現にオープンデータの活用できるという確信のもと、静岡市との実証事業に取り組んでいる。これは、企業ニーズと行政オープンデータの組合せをコンパクトにマッチングさせ、単年度で大きな実績を上げた好例と言える。こうした、素直な組合せはきっと他の企業とデータの間にもあるはずだ。
 
企業の未熟については、横浜市の経済局の事業では昨年度、数々のオープンデータ関連のセミナーを行ってきたが、既存ビジネスモデルの中で、オープンデータをどう活用できるか発想できる、または、実装できる技術力を持つ企業はまだまだ少ないということがわかってきた。というか、オープンデータやデータ活用に投資しようという企業が少ないと言った方が正しいか。これは、企業に対するヒアリングの中でも感じたことだが、既存企業のエグゼクティブに対しては常にデータ活用の必要性や有効性を理解してもらいたいと思って話をしているが、それが、現行の商習慣やビジネススキームの中で生きる企業に対しては大きな変革を迫ることにもなる場合も多い。いわば、ウェブやオープンソース的な世界感、リーンスタートアップ的な思考の押し売りになるケースだ。そんなことをしても、だれも幸せにならない。
(ただ、年度内10回以上実施したセミナーの中ではも興味を持って個別に連絡をくれる会社もあったり、既にオープンデータを使うようにサービスを実装した企業もあったりと、少しずつ共感が広がっていることはとても嬉しい。)
 
そういうわけで、ベンチャーインキュベーションの強化、既存のデータビジネスの誘致についても積極的に行う必要がある。
 
自治体としてベンチャーインキュベーションに取り組んでいるところは共通した悩みではないかと思うが、起業家に対するインセンティブやモチベーションをどこに求めるかが難しいと感じてはいないだろうか。ぶっちゃけ、金だけじゃないのである(もちろん、金も一要素だけど)。技術力を持ち、未来を切り拓くビジョンを持つ起業家に対して響くインセンティブやモチベーションとは、技術を持ってイノベーションを起こしているという実感に他ならない。自分達の技術が人々の暮らしの質を向上させ、都市の体験の質を向上させる。「自分の思い描く未来がこの都市であれば実現できる」、そのようにイメージさせることができれば、自然と人は集まり、都市の競争力は高まっていくのではないだろうか。
 
具体的には、支援制度的な話、特区的な話、行政職員の熱意、コミュニティの雰囲気、などなど、いろいろと要素があり、戦略的に組合せながら実施していくことになるのだと思う。
 
まちづくり×ICTを推進する情報アーキテクト的な立場から言えば、前述のとおり、都市の状態をリアルタイムで捉え、企業や市民活動にフィードバックできる環境、いわゆる「センサブルシティ」に可能性を感じている。街中のアプリケーションがセンサーやクラウド上のシステム(ここではオープンデータが存分に活用される)とインタラクションし、人々の行動規範に対しても大きく影響を与えるような世界だ。オープンデータやビッグデータはAIとは不可分の関係にあり、これからの世界をリードする産業分野だと思う。AIは将棋や囲碁だけの話ではなくて、都市の中で活かされてこそ。わたしたち一人一人の日々の生活に直接影響するような技術やサービスがもっと発展するために、都市自体がオープンデータやセンサーネットワークの整備にも意識を向けるべきである。
 
最後に、何年か前から噂はあったのだが、先日もニュースになっていた。
「米運輸省、グーグルと「スマートシティ」を推進 7都市で始動」
 
ここで言われているスマートシティは「環境」や「エネルギー」のことだけではなく、もっと、広い概念として言われている。まさに、ぼくが本稿で述べたような世界を実現しようとしているのだろう。
 
ぼくらのグループでも「センサブルシティ」については、研究を進めており、一緒に実践してくれる都市や企業を募集しています。興味があれば、ぜひ、連絡ください。

ヨコハマ・アート・LODとGettyLODをマッチングさせてみた

(2016/04/13追記あり)
SPARQL Advent Calendar 2015用に書きました。
この界隈であれば、ヨコハマ・アート・LODプロジェクトについて知っている方も多いとは思う。ヨコハマ・アート・LODとは、公益財団法人横浜市芸術文化振興財団とぼくが中心となって推進している横浜の芸術文化情報のLOD化をするプロジェクトだ。これまで、イベント情報や施設情報、横浜美術館大佛次郎記念館の目録情報などを含む7万点以上のデータをLOD化してきた。(くわしくは、ヨコハマ・アート・LODのウェブページを参照)そのプロジェクトで最近取り組んでいるのが、作家情報のGettyLODとのリンキングである。
 
Getty財団はご存知だろうか。
世界でも有数の美術品コレクションを誇る財団でアメリカにロサンゼルスに本拠地がある。今年夏にロサンゼルスに行った際には叶わなかったが、広大な敷地に広がる優美な美術館には一度訪れて見たいものである。(ロサンゼルスからアナハイムへのUberで、運転手がデートで行ったとかで、ハイウェイの渋滞中に自慢げにスマホの写真をみせつけてきたが、まぁ、カリフォルニアの青い空のもと、白銀の建物が眩しく写っており、羨ましいかぎりであった、、)
 
 
このGetty財団だが、コレクションの量と質もさることながら、予てよりデジタルアーカイブの整備と公開を積極的に進めており、昨年あたりから、構造化データの一部をLODとして公開しはじめている。そういうわけで、美術関係者以外にも、オープンデータ界隈(Open GLAM界隈)でも話題となっているのだ。そして、もっとも最近ではUnion List of Artist Names (ULAN)と呼ばれる作家情報に関するデータセットを公開。すでに公開済みであった、シソーラスや地名などに加えて、作家情報という具体的なインスタンスが公開されたことはインパクトが大きい。
 
Gettyのリリースを引用
Getty Union List of Artist Names (ULAN) Released as Linked Open Data
 
We’re delighted to announce that the Getty Research Institute has released the Union List of Artist Names (ULAN)® as Linked Open Data (LOD). The Getty is committed to making our knowledge resources freely available to all, and this is another important milestone in that ongoing effort.
 
ULAN®, along with the other Getty vocabularies, is created and maintained by the Research Institute and used by art researchers all over the world. It is the third set to be released as Linked Open Data and follows the releases of the Art & Architecture Thesaurus (AAT)® and the Getty Thesaurus of Geographic Names (TGN)®. All three vocabularies are now available at vocab.getty.edu, free to download, share, and modify under an Open Data Commons Attribution License (ODC BY 1.0).
 
We hope that making our vocabularies available to the research community as Linked Open Data will have a transformative effect on the discipline of art history in general, and digital art history in particular.

http://blogs.getty.edu/iris/getty-union-list-of-artist-names-ulan-linked-open-data/

 

ということで、ヨコハマ・アート・LODでも横浜美術館の目録データセットの中で作家データを扱っているので、これはぜひ、リンクしてみよう。そもそも、ご覧いただければわかるように、横浜美術館の作家データはとても情報量が少なく、名前、生年、没年くらいしかない。これだと、ちょっと寂し過ぎる。一方、GettyのULANは多言語による作家名の表記、バイオグラフィなども大変充実している。これが、LODとして利用できるというだから、使わない手はない。
 
さて、肝心のデータだが、ULANのデータモデルについてはドキュメントが用意されているのでそちらを参照していただきたい。
 
スタート地点としては、このコンセプトモデルとなる。
ULANに先行して整備されてきた、AATやTGNに対しても積極的リンクしてあり、まさに、Linked Dataとなっている。

f:id:waonah:20151216105953p:plain

個別のインスタンスは、もちろんURIから取得できる。
例示があったので、それをそのまま引用してみる。
ULAN: Albrecht Dürer
Human-readable full record: http://vocab.getty.edu/page/ulan/500115493
Human-readable hierarchy view: http://vocab.getty.edu/hier/ulan/500115493

 さらに、SPARQLエンドポイントも用意されており、基本的にはこちらから必要なデータをクエリして取得することになる、

GettyのSPARQLエンドポイントは取得するファイルタイプごとに接尾辞で区別されている。
CSVの場合は、
JSONの場合は、

 となる。

ウェブブラウザから操作できるGUIも用意されているが、なんだか同じクエリを投げても結果が返ってきたり、こなかったり、安定しないので注意が必要。ターミナルやプログラムの中からクエリを投げることをお勧めする。
 
今回は、ヨコハマ・アート・LODの作家リソースとULANの作家リソースを突合せする。
必要となるプロパティ、作家名、出生地リソース、出生地ラベル、出生年、説明文を抜き出す。
ヨコハマ・アート・LODのデータセットから作家名を一件ずつ抜き出して、クエリのフィルタ部分に代入してやり、返ってきた結果を評価してマッチングしていく方針。
実際のクエリはこんな感じ。一部、SPARQL1.1の仕様であるプロパティパスを利用して記述を簡略化してある。
select distinct ?artist ?artistLabel ?artistAltlabel ?place ?placeLabel ?birthYear ?description
where {
  ?artist rdf:type gvp:PersonConcept ;
          foaf:focus/gvp:biographyPreferred ?bio ;
          xl:prefLabel/gvp:term ?artistLabel ;
          xl:altLabel/gvp:term ?artistAltlabel .
 
  ?bio schema:birthPlace ?birthPlace ;
       gvp:estStart ?birthYear ;
       schema:description ?description .
 
  ?place foaf:focus ?birthPlace ;
         xl:prefLabel/gvp:term ?placeLabel .
  FILTER (regex(xsd:string(?artistAltlabel), ‘isamu noguchi’, i))  
}
LIMIT 100

結果はこんな感じ。

(場所のラベルに対して、言語タグでフィルタすれば、件数を減らすことができるはず。) 
 
artistartistLabelartistAltlabelplaceplaceLabelbirthYeardescription
ulan:500008602 Noguchi, Isamu Isamu Noguchi tgn:7023900 Los Angeles@en 1904 American sculptor and designer, 1904-1988
ulan:500008602 Noguchi, Isamu Isamu Noguchi tgn:7023900 Los Ángeles@es 1904 American sculptor and designer, 1904-1988
 
今回はULANが作家名の別表記(xl:altLabel)を十分にもっているので、それを頼って完全一致でやっている。結果、投入した作家データ1243件中269件がマッチした。ここからは、学芸員の方の力も借りて目検してもらうつもりだ。課題としては、投入したデータの作家名表記にカッコ書きが含まれていたり、複数の作家による協同などもあった、また、字形の違い(漢字)も今回は考慮していない。おそらく、双方に関連するリソースが十分にあれば、別の方法でマッチングをはかることもできるとは思うが、今回の条件ではこのくらいが限度か?
こうした作業を経て感じたのは、データをLODとして公開利用することを前提とした場合にはそれなりに、外部データとの連係を意識したデータ整備が必要であるということだ。まぁ、まいどのことながら改めて考えさせられた結果となった。
ちなみに、あきらかに同じ人物であろうところ、生年が1年違うデータなどが複数存在していた。どちらかのミスか、解釈の違いかだとは思うが、そうしたところも双方のデータを活かしたまま、リンクで解決できてしまうのもLODの大きな魅力だと思う。
 
2016/04/13追記
SPARQL界の大御所からtwitter経由でクエリ内でregexは使うなとご指摘いただいた。

lcase使ったほうがefficientだということで、次のとおりににやってみると、たしかに、多少レスポンスの速度は上がった。
 

select distinct ?artist ?artistLabel ?artistAltlabel ?place ?placeLabel ?birthYear ?description
where {
?artist rdf:type gvp:PersonConcept ;
foaf:focus/gvp:biographyPreferred ?bio ;
xl:prefLabel/gvp:term ?artistLabel ;
xl:altLabel/gvp:term ?artistAltlabel .

?bio schema:birthPlace ?birthPlace ;
gvp:estStart ?birthYear ;
schema:description ?description .

?place foaf:focus ?birthPlace ;
xl:prefLabel/gvp:term ?placeLabel .
FILTER (lcase(str(?artistAltlabel)) = "isamu noguchi")
}
LIMIT 100

 

 
 

オープンデータのKPI議論について考えてみた

ちょう、久しぶりにポスト。

先日、facebook上で行政機関がオープンデータに取り組み際のKPIに関する議論があったのだが、そこで、ダウンロード数やアクセス数ををKPIに組み入れるという発想について改めて考えてみたくなったので、ここにまとめてみたい。


まず、大前提はOpen by Default(原則オープン)という考え方だ。この概念についてはいろいろと資料をあたってもらえれば良いのだが、ざっくり言えば、行政が作る文書やらデータやらは最初からオープンを前提にして作る。逆に、公開しない、できない場合はアカウンタビリティが求められる。という理解で良い。

公共機関がオープデータに取り組む動機はこの、Open by Defaultという考え方を確認する中で自ずと見えてくる。

オープデータのKPIにアクセス数やダウンロード数を用いようという発想は、データのニーズに沿ったものにしよという意図からくるものなのではないかと思うが、ちなみに、今年の6月に改訂が閣議決定された「世界最先端IT国家創造宣言」でのオープンデータに関するKPIは次のように記載されている。

 

  • 各府省等のオープンデータ達成状況(重点政策課題を中心とした各府省庁のオープンデータ公開状況等)
  • データカタログに掲載されたデータセットの数(機械判読に適したファイル形式のデータの登録率、外国語のデータの登録率(いずれも府省毎等)、アクセス数・ダウンロード数
  • 地方公共団体独立行政法人・公益企業等におけるオープンデータ取組状況
  • 地方公共団体のオープンデータに係るデータ形式の標準化の普及状況
  • 地方公共団体に対する人材支援の実施件数
  • オープンデータを活用して開発されたアプリケーション数
  • 成功事例における提供情報の件数

 

 

このKPIはデータそのものの公開がどの程度進んだかという指標と、その利活用状況に関する二つの指標に大分出来る。


まず、前者について、オープンデータはこれまでの一部の中央府省、地方公共団体が積極的に進めていた。そうした動きを水平的に他の組織にも広げて行こうという方向性が読み取れる。そして、さらに、個々の組織による取り組みにおいても、単にデータ公開数の拡充を求めるだけにとどまらず、データの質について機会判読式データや標準化の普及などにも言及している。


そして、後者については、人材支援、成功事例の発掘と情報共有といったところに注力していく方針であるということがわかる。


アクセス数やダウンロード数という要素もまったく無いわけではないが、あくまでも、データカタログサイトの質の向上という点でのKPIであろう。国家の情報戦略の中のオープンデータは、オープンデータの概念を確認して支持するフェーズから、質と量の拡充、そして利活用の推進へとフェーズが移ったと解釈できる。
ここではKPIにフォーカスして議論しているが、「世界最先端IT国家創造宣言」本文を読むことでさらに理解を深めることができるので、興味がある方は、ぜひ、一読することをお勧めしたい。

 

ちなみに、6月に改訂される前の「世界最先端IT国家創造宣言」では、Open by Defaultの考え方を支持する一文が掲載されている。その部分を引用してみよう。

 

公共データについては、オープン化を原則とする発想の転換を行い、ビジネスや官民協働のサービスでの利用ががしやすいように、政府、独立行政法人、地方公共団 体等が保有する多様で膨大なデータを、機械判読に適したデータ形式で、営利目的も含め自由な編集・加工等を認める利用ルールの下、インターネットを通じて公開 する。

 

オープンデータの議論でよくあるのが、「なんに役に立つのかわからない」というものだ。
オープンデータの考え方ではデータを公開する主体と使う主体は異なることがあたりまえであり、誰がどんな使い方をするかわからない部分に大きな可能性があると捉える。積極的にデータを公開することで、あらゆる分野でイノベーションの機会を最大化することがオープンデータの主な狙いなのである。
そうした前提に立つならば、ニーズが見えないからデータを公開できないという考え方がナンセンスに見えることも理解できるのではないだろうか。(政府はオープンデータにとりくむべき重点分野を明確にしており、ニーズが肌感覚でわからない場合は、この重点分野から取り組んでみるのも良い判断だと思う。)一方で、オープンデータの質と量を高める取り組みにも際限がないとも言えるので、ニーズありきで優先順位を付けてオープンデータに取り組むというのもまっとうな判断と言える。

 

幸い、国や地方公共団体でオープンデータの推進に先導的な役割を担ってくれる方々は着実に増えているので、いまさら、オープンデータが萎むとは考えていないのだけれど、今後よりいっそうの発展を期待する中では、折に触れて今回のような議論を丁寧に繰り返すこともまた必要なのだろう。

International Open Data Day in YOKOHAMAレポート

先日世界同時105都市にで開催されたInternational Open Data Dayだが、横浜でも「International Open Data Day in YOKOHAMA」が開催された。横浜のこのイベントでは午前10時から三つの分科会が開かれ、そして、夜のオープンデータパーティーまで、総勢120人を超える参加者を集め盛況であった。

横浜でのオープンデータの盛り上がりは日本の他の多くの都市と大差はなく、去年の夏頃から始まった。(我々の横浜LODプロジェクトなど先行事例はあったが、、)

まず、国が昨年7月に「電子行政オープンデータ戦略」を策定し、続いて総務省が設置したオープンデータ流通推進コンソーシアムに横浜市も賛同自治体として参加することになった。9月の横浜市会ではオープンデータの重要性を訴える議員の質問に対し林文子横浜市長はオープンデータへ取り組むことを明言した。そして、12月には内閣官房の設置したオープンデータ実務者会議において自治体では唯一、横浜市から政策局の長谷川さんが参加することとなった。

以上の政治的な動きに加えて、民間側の動きとして、民間主導によりオープンデータを推進する目的で地元企業、NPO、研究者を中心に横浜オープンデータソリューション発展委員会が発足した。

同委員会は11月に富士ゼロックスの協力、横浜市後援のもと、キックオフイベントを開催。「オープンデータが紡ぎだす新しい公共」をテーマに対話型のワークショップを実施した。翌12月にはヨコハマ・アート・LODプロジェクトの実践で先行する公益財団法人横浜市芸術文化振興財団と共催で文化観光をテーマに具体的なオープンデータ活用のアイディアを話し合うワークショップを開催、さらに今年1月にはLODチャレンジ実行委員会との共済で25時間のハッカソンを開催、先のワークショップで発案されたアイディアを元に具体的なアプリケーションやサービスを作り出した。いずれのイベントもそれぞれ100人前後の多様な参加者が集まり、多くの成果が生み出された。(それぞれの成果は別途整理したいと思う。)

そして、今回のInternational Open Data Day in YOKOHAMAは横浜オープンデータソリューション発展委員会が主催する今年度の一連のオープンデータ啓発イベントの山場であった。

分科会1ではオープンデータを活用したスマホ向けアプリを利用して町歩きを実施した。利用されたのは先のハッカソンで生まれた成果の一つで市立図書館などから提供された明治時代の錦絵などのデータをスマホのカメラ越しに実風景と重ねて見ることができる「横浜歴史フィールドミュージアム」。そして、ヨコハマ・アート・LODを活用した横浜の地図アプリ「横浜MAPS」だ。この分科会の目的はハッカーやエンジニアでない人々に対して、体験を通じてオープンデータの意義を感じてもらうことにある。いずれのアプリもスマホのGPS機能により自分がその時にいる場所を起点とした情報提供を行う機能を持つ。オープンデータとして提供されるPOIが緯度経度データを持ってさえいればこうした機能を活かすことができるのだ。また、ヨコハマ・アート・LODのようにPOIとイベント情報がリンクされたデータであれば、場所と時刻に応じたイベント情報の提供も可能となる。さらに、緊急避難場所のデータや、推奨帰宅経路データなど災害時に必要とされるデータがマッシュアップされると良いかもしれないなど参加者からも活発にアイディアが発せられていた。(残念ながら現在横浜市が公開しているデータでこうしたことを実現するのには少し手間がかかるとは思う。もっと公開の仕方を工夫してもらわねばならない。) 

以上のようにオープンデータとの関わりをリアリティを持って想像してもらうのにも実際の街歩きは有効であったと思う。

 

分科会2ではハッカソンを開催した。「横浜が日本で最初」チームでは開港都市ならではの横浜に数多くある「日本初」を集めたデータを作成した。このデータはKML形式として公開しておりGoogleEarthと組み合わせることでバーチャルツアーも可能だ。

同テーマのデータは横浜市中区が「中区の歴史を碑も解く絵地図」として編纂をしており、また、観光コンベンションビューローも同様のデータを持っている。これらがオープンデータ化されることを期待している。

NPO Linked Open Data Initiativeの加藤さんが参加したチームは日本の都市では初となる横浜のデータカタログサイトの構築を行った。オープンデータカタログとしてはグローバルスタンダードとなりつつあるオープンソースソフトウェアであるCKANを利用し、サーバーはMicrosoftからクラウド環境であるAzureの提供を受けた。CKANには別のCKANとの間でデータを連携する機能を備えており、すでに稼働しているdata.linkedopendata.jpとの連携も計画している。

 

(ハッカソンの他の作品については、後日詳細をキャッチアップしてから追記します!) 

 

三つの分科会は「横浜をWikipediaタウンにしよう!街歩き」と題して横浜の魅力資源についての記事をその場で作成しウィキペディアに投稿するワークショップを行った。講師に日本のウィキペディアコミュニティの中心的存在であるくさかきゅうはちさんを招き、また会場と資料を横浜市中央図書館から提供を受けた。

横浜市認定の歴史的建造物をテーマに設定し、そこから事前に4つの対象をピックアップ、図書館には関連資料を用意しておいてもらった。当日はくさかさんによるウィキペディアに関する基礎的なレクチャーの後、グループに別れて資料を見ながらそれぞれ記事の作成を行った。

図書館で資料を調査した後はフィールドワークへ出かけ、各チームそれぞれ対象となっている歴史的建造物を実際に訪れ写真撮影などを行った。その後さらに会場をさくらWorksへ移し再度記事を編集、ウィキペディアへのアップロードを行った。

今回の参加者にはウィキペディアの編集経験を持つ人は誰もいなかったが、次の4つの記事を書き上げることができた。

 

(加筆)http://ja.wikipedia.org/wiki/掃部山公園

(加筆)http://ja.wikipedia.org/wiki/汽車道

(新規)http://ja.wikipedia.org/wiki/横浜情報文化センター

(新規)http://ja.wikipedia.org/wiki/インド水塔

 

このワークショップでウィキペディアを利用した狙いはいくつかあるが、オープンデータに寄り添った見方をすれば、ウィキペディアの編集を通じてプログラミングのようなスキルを持たない参加者が自らオープンデータを作る試みであったと言える。ウィキペディアのコンテンツはクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC-BY-SA)で提供されており、それ自体がオープンデータと言える。さらに、ウィキペディアから機械的にデータを抽出しLOD化するDBpediaプロジェクトもあり、ウィキペディアの応用範囲はオープンデータの世界でも日々拡大している。

参加者からは、普段から利用しているウィキペディアに自ら作成した記事をアップすると、それが普段見慣れた他の記事と同じようにウィキペディアに存在するようになるというのは快感だという。

それだけ、ウィキペディアはウェブにおいて、または、我々の日常において重要な存在となっているということだろう。

このアクティビティはぜひ今後も継続していきたいと思う。

 

そして、三つの分科会の後はオープンデータパーティーが開催された。

会場は今回の一連のイベントのメイン会場であるシェアオフィス「さくらWorks」で引き続き行われた。

前半ではInternational Open Data Dayを開催した日本全国の他の都市との中継、分科会各チームの成果報告が行われた。

後半はNPO Linked Open Data Initiativeの設立パーティーとして、武田英明代表理事よりNPOの紹介があり、経済産業省CIO補佐官平本さんからは挨拶をいただいた、「国連の会議で日本のオープンデータの取り組みを発表してきた。オープンデータ後進国と見られてきた日本であったが、ここ1年の爆発的に広がった活動の報告をし、世界にはダークホース的存在として映っただろう。」と冗談交じりに語っていた。また、鯖江市情報統計課の牧田さんも牧野鯖江市長のビデオメッセージを携え駆けつけてくれた。(さらに、鯖江の銘酒梵まで差し入れてくださった!もちろん、梵はパーティーの参加者全員で美味しくいただきました。ありがとうございました!)

LODチャレンジ実行委員会の事務局長乙守さんからはLODチャレンジの紹介として、今回のLODチャレンジへの応募作品「A Little and Big World - Tales of LOD」の朗読をいただくなど、、とても密度の濃い会となった。

 

これまでの一連のイベントを通じて、オープンデータの認知はだいぶ広がったと思う。そして、今回のInternational Open Data Day in YOKOHAMAでは三つの分科会を通じてオープンデータに対する多様な関わり方があるということも示すことができたのではないかと思う。

しかし、横浜370万都市においてオープンデータを媒介とするエコシステムを実現するためにはまだまだプレイヤーの数が足りていないと感じる。地元企業、NPO、大学、研究機関、公共セクターなどより多くの主体を巻き込みながら、それぞれのプレイヤーが持つ既存のコンテキストまたはスキームにオープンデータを引き寄せて活用していくことにより、着実にグッドプラクティスを積み重ねていく必要があるであろう。